本日劇場公開の『プリンセス・プリンシパル クラウンハンドラー』この前日譚にあたるアニメ版と併せて視聴したので、久々にちゃんと感想を書こうと思います。
アニメと劇場版で別エントリなのでこちらはアニメの感想です。
まず一言で
圧倒的尺不足!!
足りなすぎるよおおおお、せめて16話、それか45分だったら…
世界観も脚本の練り込みも素晴らしい。だからこそ、もっと観たかったし一応の決着までは行って欲しかった。ただ、尺が、圧倒的に尺が足りてない…
もともと二期or劇場版想定だとしても、ちょっと尻切れトンボなのは否めないと思います。
以下不足していると思われる箇所について。
この作品のゴール(登場人物の目標)は、アンジェとプリンセスが安心して暮らせる世界に変えること、すなわち王女が女王になり壁を壊すこと、と設定されています。
しかし、そこまでの道のりが見えてこない… ここが残念に感じました、後でもう少し詳しく書きます。
次に登場人物、特にベアトリスの掘り下げが不足していること。
彼女の特殊能力と家庭環境はわかりました。なるほど、日陰者だったところをプリンセスに助けられてずっと付き添っているんですね。
いや、ちょっとまって、だからといってここまでスパイやるか??
プリンセスを女王にする夢を叶えるためなのはわかるんですけど、そこまでの強い動機を持つ描写が少々不足しているように思います。
作品のコンセプトは、女子高生スチームパンクスパイもの、である以上彼女がスパイをやることに何ら異議はないのです。とはいっても、もうひと押しドロシーの強い意思を見せて欲しかった…
また、チセの動機にももう一声ほしいところです。万一捕らわれたら、国家の友好関係やばくないかい?そこまで体張ることある?
ふたりとも個別回はあるものの、プリンセスと自分のどちらかを採るのか、その葛藤に悩むシーンをもう少し見たいところでした。
ただし、上記の二点に関しては、劇場版という続編が既に公開されており、描写を期待しています。コロナ禍での制作は大変でしょうが、スタッフの皆さんの頑張りに期待です。
道のりについて補足を。
プリンセスのもっぱらの障害は、継承順位にあります。現在4位ということですのでまだ上位に3人いることになりますね。疑問なのはその方法です。一体全体どうやって彼らを凌ぎ王位を勝ち取るのでしょうか?
方法は視聴者が思いつくようなものでなくていいのですが、プリンセスはどんな方法を考えているのか、アンジェも同じく不明です。現状は、話のゴールが見えず物語を推し進める力に欠けるように思います。
ここまで欠点に目を向けてしまい失礼しました。最初に書いたとおり、脚本の練り込みと作画は目を見張るものがあります。スチームパンクスパイものなんていう、背景も手が掛かるし、話も分かりづらい企画を通した監督の蛮勇には恐れ入ります。
地上波放送時に感想を残しておられる方々のおっしゃるとおり、1話2話の脚本は本当にすばらしいです。視聴者はもちろん、国をも騙すアンジェとプリンセスには度肝を抜かれました。1話の嘘を付きながら躊躇いなく発砲するシーンも最高です。まさにスパイもの!
また、作画といったら5話でしょう。剣戟はほんとうによく動いてました。下手人の正体とチセの感情には、心を動かされました。
度々挟まる19世紀末、ビクトリア朝の描写も目が離せません。産業革命+国家分裂という激動の時代には、依然として階層社会ですが、人々はより働き、買い、食べ、活動しているのです。例えば、7話では都市の中間労働者層の出現が描かれています。食文化に関してはあまり描写がありませんが、6話では労働者の利用するパブが登場しました。その日の稼ぎを得ることぐらいは可能のようです。
また、複数登場する王城は、中央にガラス天井の広間が設けられています。当時の最先端素材であるガラスを、惜しげもなくふんだんに利用しているわけです。覇権国家となったアルビオン王国が冨を独占し、建築の最前線に立っていることも伝わってきますね。
建築について、もう少し書かせてください。ドロシーが頻繁に使用する陸橋は本当に巨大です。王族専用の高速道路でしょうか? どれほどの労働力が投入されたのか検討もつきませんね。また大規模な水道橋の描写もありました。冒頭での「ローマ帝国に次ぐ覇権国家となった」とあるように、偉大なる先人を模したものでしょう。とすると、この労働力についても見当がつきます。戦争で獲得した捕虜(奴隷)のはずです。11話では軍隊の反乱が描かれ、彼らの多くは植民地出身ということが明かされました。植民地は概して搾取されるものです。アルビオン王国は、多くの国家と地域から恨まれているんでしょうね。
そもそもの壁がまぁ、でかいでかい。これも大量の労働力が投入されたことでしょう。壁の描写は兵舎として内部が確認できましたね。高さもかなりありそうです。
ただ、色々世界観を考察したのですが、やはり圧倒的にアニメ本編での描写が少なく歯がゆいです。一番謎なのは王国の実行領土。ロンドンの半分が王国なわけないでしょう。内務卿に忠を尽くしているのはハイランド部隊、つまりスコットランド北部の出身者なわけで。
おそらくは想像の余地を残すため、あえて説明をさけているのでしょう。あと4話あったら、共和国のトップがだれだとか、外国勢力の動静とか…
けれど、一番観たかったのは壁超えですよ!! 観てえよ!壁超え!要人をどう渡しているんだよおおおお!!! 壁チームはどうやって超えてんだ、知りてぇええ!
他にも良かったのは劇伴です。梶浦由記はやっぱ神。いつもの+ジャズ雰囲気がいいですね。まだサントラ聞いてる最中なのであんまりコメントできないんですけど、どの曲もどこか影があり、本当にマッチしてます。
お気に入りは「a royal girl」。そもそもストリングスが大好き。それに加えて、この曲は華やかさの裏に恐れや怯えを感じさせるのが、プリンセスを非常に上手に表現しているように感じます。展開部で変化したのち、主旋律に戻るのがいいんですよ… 言語化できない音楽理論があるのが毎回悔しい。
家の環境ですと2chで劇伴まではなかなか聞けないのが厳しいですね。劇場版には、撮り下ろしもあると思うので期待です。
以上本放送から約3年と半年、観よう観ようと思っていましたが劇場公開前に駆け込みで視聴しました。2/14までyoutube・ニコニコ動画にて全話公開中です。ぜひ観てください。
www.youtube.com
あのエンディングから3年半待たされた本放送組の心中は想像に余るものがあります…正直このタイミングで見れてよかった。
劇場版の感想もすぐ上げます。ではではー
2/12 継承順位について追記 また画像はすべて無料公開中の第一話からのキャプションとなります