damegakusei's diary

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映画「バービー」感想 しょうもない母と娘へ(あるいは男へ)

バービー 感想

観ていて一番感動したのは、人間界に降り立ったバービーが老婆と目を合わせ「あなた綺麗ね」「知ってる」の下りだった。

艱難辛苦を乗り越えた老人にこの言葉を投げかけるのが完璧な美をもっていたオモチャというのが自分には痛く刺さった。

 

フェミニズム万歳映画じゃないか、イヤそうではないと喧々諤々の本作ではあるが、自分なりの感想を残したい。
特に話題になっているラストシーンの解釈もある。最初にこの点について記したい。
まず、間違いなく妊娠、受胎していると自分は捉えた。結局この映画はラストの処女懐胎を一番撮りたかったのではないかと感じている。
もし、婦人科にただ行っただけ(生理が起こった)ではバービーが望んだ変化、「想像されるより想像したい」の答えは不明瞭である。
物語を動かした母娘と、娘に似せて創造(クリエイション)した老婆が、バービーへ与えた変化が妊娠でないとすると非常に不自然だ。
ラストシーンが意図的な表現をさけているのは、処女懐胎という聖書の中でもトップクラスに知名度のあるシーンをモチーフすると決めていたからだろう。
つまり、一般人を代表する定番バービーを通じて妊娠出産の尊さを今一度伝えるためである。
特別な女性でなくとも母になれるんだよそれってすごいことなんだよ、というメッセージを自分は受け取ることができた。

 

この懐胎の神々しさを伝えるためにこそ、ケンは空回りし続け聖書の引用が随所にされる。
「バービーの瞳の中」にしか生きられないケンの悲恋、報われないイタイタしさに男の自分としては同情してしまう。
ただし、彼の恋は否定されることで処女懐胎と成るため必要不可欠な要素なのだ。
聖書の引用については上述の創造や変てこバービーを知恵を授けた蛇に見立てるといったところだろうか。
変てこバービーについては、蔑視していたことを謝罪したとて賤業しか任せないという皮肉も強いが。

バービーランドとケンダムについても整理が必要かと思う。
双方とも極端な楽園として描かれている。バービーランドはまさにフェミニズムの楽園だ。仕事はすべて女のものでずっと美しいまま、毎晩サイコーなダンスパーティー
ケンダムはマッチョイズムの楽園であろう。女には酒を運ばせ講釈を垂れ、スポーツを楽しみ友情に厚い世界。
双方ともホモ社会の戯画化、極端な姿を描き出している。
もちろんこれらは断じて真の楽園ではない。しかも、”女の””男の”楽園ですらない。
バービーランドでは美から外れると吐くほど引かれる。変なバービーは差別されている。
ケンダムでも男のアランは頭がおかしくなりそうだと脱出を図っている。
これら空想世界は現実世界からの行き過ぎた理想なのだ。そのため現実世界の人間によって理想は理想なのだと思い知らされる。
バービーランド、すなわちフェミニズムの理想はまず道路工事によって否定される。
ごみ収集から建設業まで女が行うという理想は現実世界では全く受け入れられていない。
次いでサシャが理想の押し付けがましさを当世風に批判しファシズムの烙印を押す。
ケンダムは勿論最低だ。と言い切り………
(見た映画の感想を読ませるのは楽しいのである。また馬にも乗りたいと思ったがその価格から断念している。田舎で飼育するにも費用がすごいらしい。おまけに最近音楽を始めた、できたら女の子を落としてみたいとは正直思う。ああいうマッチョな友情にも憧れがある。ヤンキーもの・喧嘩ものはやっぱり時代を問わず流行るのだ。あと、戦争映画や兵器も大好きだ。)
ケンダムは最低である。この理想はグロリアが洗脳を解く形で否定されたうえ、ケンたちの男の性を利用され崩壊する。
これら理想郷にて男女のしょうもなさが描写される。コメディチックに描かれて愉快なのだが、まごうことなき現実の一部だ。最終的にバービーランドは元の姿を取り戻すが、ケンの社会参加は限定される点もしょうもない現実である。

 

この男女のしょうもなさが全編通して描かれているのが自分はとても好きだ。人間世界は男社会だと描写されるが結局男はなにも成していない。権力にまみれたCEOとイスマンしかいないマテル社。彼らはずっとついてきてるだけ。グロリアは男性に抑圧された経験を語るがスペイン語を練習する夫を顧みない。社会的に尊敬されるような仕事や地位に関係のない、しょうもない結果の妊娠の素晴らしさがクローズアップされて伝わってくる。

 

マーゴットもライアンも最高だった。特にマーゴットの涙は素晴らしい。感動したりやけになったり泣き顔がとってもかわいかったですね。
自分の創作に役立つポイントとしては、批判する馬鹿にするなら全方位にすればよいという点。誇張はしているけど嘘はついていなし全部馬鹿にしているから敵がいない。
いい父親、息子がでないのはこの映画が「バービー」である以上当然だろう。これまで父子は沢山あるが、現代の父と息子ものに今後期待している。
後日ディスクも購入したい。非常にいい映画でした。